はじめに



第1の視点

 企業に企業内通信網が導入されて、いままでパソコンに興味がなかった人も、パソコンの使用を余儀なくされてきている。今まで個人的に、部分的にパソコンを仕事に使っていた人々の間にも、一部ではデータの共有化、ソフトの共通化の流れが起きている。
 こうした流れを受け、家庭用にもパソコンが売れている。日経バイトの記事によれば、「パソコン・マニアを除けば、家庭用として売れているパソコンのうち半分くらいの人は、会社でパソコンを使わなければならなくなって、勉強用に買う」という。「脅迫観念で買っている」とも報じている(注1)
 企業におけるパソコン採用は、あくまで集中処理型のホストコンピュータからのダウンサイジング(小型化、分散化)の一貫として位置づけられる場合が多い。ダウンサイジングは、大きな組織の情報の流れを、集中的に処理することに限界があったことと、利用者が直接操作できるほど能力を持った端末(=パソコン)の登場により、発生した。
 しかし、パソコンはもっと個人的使用を前提とした道具であって、企業内システムの一部として用いられるのは、本筋ではない。本論文は、ダウンサイジングの流れの中でのパソコンという位置づけではなく、個人を中心とした視点で、家庭での使用を中心にパソコンをとらえようという意識の下で書かれた。

第2の視点

 パソコンが売れている。国内の出荷台数は94年が340万台、95年が555万台である(注2)
しかし、これまでは企業向けとしての導入が中心で、家庭へのパソコン普及率は10%程度とまだ低い(注3)。パソコンは、いままでの家電製品とは異なり、汎用型で使用目的があいまいな商品である。そのため、これまでにもパソコンを買ったが使えなかったという例が多かった。
 それは、使いやすくなったと言われている現在でも同様との見方もある。
「パソコンに関する本は山ほどある。しかし、その大部分は、パソコンという機械だけを切り離して、どう使うかを書いた本である。」として、個人情報システム(=個人を中心とした情報の流れを、システムとしてとらえたもの)の中でパソコンをどのように位置付けるかの議論が重要との指摘がある(注4)
 本論文の第2の視点は、家庭用パソコンを個人情報システムの中でどう位置づけるかという視点である。

現在までの論議の問題点

 野口悠紀雄のパソコンによる整理法(注5)は、主として研究者を想定して論じられた。従って、データを蓄積する、検索する、発想するという知的生産の一連の処理を効率化するための道具として、パソコンをとらえている。
 しかし、パソコンはワープロ専用機とは異なり、汎用性の高い極めて個人的なツールであり、研究者用のワープロ使用法としてならともかく、一般的なパソコンの活用法を論じたとは言いがたい。高度知識社会(=情報化社会、筆者注)(注6)になれば日本中の多くの人が、研究者の延長上としてのパソコン活用法を必要とする傾向にある(注7)ことは、その通りである。しかし、他方で、一般の家庭での使用という観点からすると、違和感があることも事実である(注8)
 後に出版された、パソコンの活用本も、その多くは、あくまで自分の体験をもとにした活用法を論じているにすぎず、ごくふつうの環境を前提とした活用法の一般論を論じたものは見あたらない(注9)

パソコンの特徴


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